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高性能SLC NANDフラッシュは車載システム向けコードストレージとしての道を拓けるか

二つの種類のフラッシュメモリが、システム設計者に広く知られています。

1つはNORフラッシュで、長期間データを保存できる堅牢で信頼性の高いメモリです。 256Mb以下の低容量の製品が生産されており、ビット単価が比較的高いです。

もう1つは大容量を利点とするNANDフラッシュです。2018年2月現在、最先端の3D NAND製品は6Tbもの大容量品が入手可能で、ビット単価を大幅に抑えられます。

これにより、設計者は、特定のアプリケーションにおけるフラッシュメモリの選択をガイドするための、簡単で実践的な経験則を得ることができます。

これは、NORフラッシュおよびNANDフラッシュの使用に関する業界の一般的な想定です。ただし、実際には全てが事実とは言いきれません。NORフラッシュおよびNANDフラッシュの技術の進化速度は異なるため、相対的な利点や欠点も日々変化しているからです。

現在、誤動作の許されないコードストレージ用に、特定タイプのNANDフラッシュがNORフラッシュの代わりに使用されるべき状況があります。 そのNANDフラッシュはNORフラッシュと同等の信頼性や堅牢性、耐久性を備えつつ、ビット単価を半分以下に抑えることができます。

本記事では、これらの状況や、NORフラッシュのコードストレージ技術が全てのケースに適しているわけではない理由を説明します。

 

フラッシュの選択が重要な理由

多くの組込みアプリケーションにおいて、コードストレージ用NORフラッシュがSPIインターフェースを備えたシリアルNANDフラッシュに置き換えられる可能性はほとんどありません。最大で256Mbのコードを有する組込みアプリケーションにて、NANDフラッシュはNORフラッシュより安くなることはありません。256Mb以下の低容量の場合、メモリ・セル・アレイだけが主要回路というわけではなく、ロジック回路やチャージ・ポンプ回路などの周辺機能がチップ面積の大部分を占めます。これは容量が小さくなればなるほど当てはまります。したがって、NORフラッシュに比べて、NANDフラッシュのメモリ・セルが小さいということはメリットになりません。しかし、512Mb以上の容量では、チップ面積のほとんどがメモリ・セル・アレイで占領されているため、NORフラッシュと比較した際のNANDフラッシュの低ビット単価は大変魅力的と言えます。

一方、新興分野である組込みアプリケーションにとって、256Mbのメモリ容量では不十分です。特に、近年開発が活発に行われている車載システムにおいて、そう言えるでしょう。最先端のADAS(Advanced Driver Assistance System)から自動運転システムまで、車載システムは、もっと大きなコードを生成します。車載システム・メーカはコードストレージ用メモリとして、2Gb(256MB)以上の容量を必要とします。

コストに厳しい環境にいる車載システム設計者は、より大容量のNORフラッシュか、低コストのNANDフラッシュでコードストレージに適したものの、どちらかを要求します。

しかし、このような設計者たちの願いは、NORフラッシュの技術開発が難しいという現実に直面しています。

 

NORフラッシュ・プロセスの微細化の終了

半導体業界はこれまで、より高性能な商品をより低コストで提供するための手段として、製造プロセスの微細化に取り組んできました。NORフラッシュも長年その中の一つでした。1986年に、1.5µmノードが最先端の製造技術だったNORフラッシュも、約20年後には65nmノードで製造されるようになりました。

NANDフラッシュのプロセス技術は微細化が続き、スマートフォンやPCに使用されている最も大容量の3D NANDフラッシュは現在1xnmノードで製造されています。

しかし、NORフラッシュの微細化は終わりを迎えつつあります。65nmノードでさえ非常に困難と言われていましたが、2008年に、インテルが新たな45nmノードの製造プロセスを発表しました。それから10年後の2018年3月現在、45nmノードのNORフラッシュを供給するメーカは1、2社しかありません。他のメーカは、開発中ではあるものの4xnmノードのロードマップを掲げています。

半導体業界は、NORフラッシュの特定の素子のサイズから、製造能力の限界に達していることに気づきました。もし65nmノードでNORフラッシュの微細化が減速したのなら、45nmノードは完全に障壁となり、この先の微細化は見込めません。

つまり、車載システム・メーカにとって、ムーアの法則によってNORフラッシュのビット単価が低下することはなく、自動運転などの高度なアプリケーションの導入に伴うコードストレージの必要性の高まりにより、プロセスの微細化はさほどBOMコストを左右しないのです。

誤動作の許されないアプリケーションにおけるコードストレージ用として、ビット単価の低いNANDフラッシュがNORフラッシュの代わりに使用できるでしょうか。

その問いに答えるには、NANDフラッシュのデータ消失メカニズムを理解する必要があります。

 

NANDフラッシュの一般的な不良モード

通常のNANDフラッシュの動作の過程において、ビット・エラーは下記2つのとき発生します。

2つ目のメモリ・セル・アレイからの電子リークは、一定期間後のデータ損失につながり、読出し不良を引き起こす可能性があります。超高温での動作は電子リークを促し、NANDフラッシュのデータ保持期間を短縮します。

書き込み時のビット・エラーによるデータ消失のリスクは、堅固な誤り検出訂正(ECC / Error Correcting Code)の実装によって排除できます。ウィンボンドの46nmシリアルNANDフラッシュは全て、1ビットECCを搭載しています。

一方、電子リークは防ぐことができません。しかし、それがもたらすリスクは何でしょうか。これは、プログラされたメモリ・セル内の初期電子数とリーク率を計算するだけの問題です。簡単に言えば、メモリ・セル内に多数あった電子が、ゆっくりと失われていくと、データが確実に読み取ることができなくなるまで非常に長い時間がかかります。

初期電子数は、メモリ・セル・サイズの関数です。 図1に示すように、NANDフラッシュのメモリ・セルは どの製造プロセスでもNORフラッシュのメモリ・セルより小さいです。 これは2つの技術の本質的な特徴であり、なぜNANDフラッシュがより低いビット単価で提供できるかを示しています。 (チップ面積は小さいほど安価になります)

1: NORフラッシュが2xnmまで微細化した場合の、NORフラッシュとNANDフラッシュのメモリ・セル・サイズ比較。 2xnmNORフラッシュが製造できれば、4xnmNANDフラッシュのメモリ・セル・サイズに匹敵します。 (画像著作権:ウィンボンド)(別表:参照1)

 

図2はNORフラッシュのメモリ・セルとSLC (Single-Level Cell) NANDフラッシュのメモリ・セルに蓄えられる電子数の比較です。これはNORフラッシュが「信頼できる」メモリであることを示しています。 130nmノードで製造されたNORフラッシュは、1メモリ・セル当たり4,000個の電子を蓄えています。 控えめに、1ヶ月当たり1電子、または10年間に120電子というリーク率で考えても、メモリ・セル内の電荷レベルに対する電子リークの影響はごくわずかです。

しかし、製造プロセスが微細化するとメモリ・セル・サイズも小さくなり、蓄えられる電荷も少なくなるため、電子リークの問題は深刻化します。これは、NANDフラッシュに限らず、NORフラッシュにも当てはまります。

現在の1xnm MLCまたはTLC (Three Level Cell) NANDフラッシュは、一定の動作条件により数時間や数日という短いデータ保持時間が得られます。これらの最先端デバイスは、定期的にメモリ・セルを再充電するため、複雑なスキャン/リフレッシュ機能を必要とします。

しかし、誤動作の許されない車載アプリケーションは、最低でも10年間という長い製品寿命にわたり、データ損失の耐性がゼロでなくてはなりません。また、設計者は、複雑でリスクの高いスキャン/リフレッシュ機能の実装を避ける傾向があります。

2 NANDフラッシュのメモリ・セルは、3xnmになっても500個以上の電子を保持します。これは、「高品質」メモリであるために必要な数です。(画像著作権:ウィンボンド) (別表:参照2)

 

高信頼性アプリケーション向けに使用する「高品質」メモリに必要な最低電子数はどのくらいでしょうか。科学的文献や根拠に基づくと、1メモリ・セル当たり500電子が品質基準とされています。これは1ヶ月当たり1電子が失われても、10年後に75%の電子を保持できる値です。図2は46nmと3xnmのNANDフラッシュが、この数字を上回っていることを示しています。

ウィンボンドが開発したHQ(ハイ・クオリティ)46nm SLCシリアルNANDフラッシュのパフォーマンスが、このフラッシュメモリの品質の閾値を裏付けています。これらの製品は、特別なスクリーニングや試験工程を必要とします。図3は、さまざまな動作温度におけるデータ保持の性能を示します。

3:ウィンボンドHQシリアルNANDのデータ保持性能(画像著作権:ウィンボンド)

 

図3は、ウィンボンドHQシリアルNANDフラッシュのデータ保持時間が、65nm以下のNORフラッシュ相当であることを示します。

高度車載向けコードストレージ・アプリケーションに関して言えば、最大100回のプログラム/消去(P /E)サイクルや85℃の高温動作におけるデータ保持期間は25年です。車載用途において、P/Eサイクルが100回行われることはほとんどないでしょう。ウィンボンドのテストデータによると、10,000回のP/Eサイクル後70℃にて15年以上のデータ保持をサポートしています。これは現在市販されているNORフラッシュと同等の性能と言えます。

ウィンボンドのHQシリアルNANDフラッシュは、ONFI NANDフラッシュのような他のNANDフラッシュの製品と同様に、NORフラッシュよりコスト・メリットがあります。512Mb以上の容量帯でのビット単価は、NORフラッシュの半分以下です。

 

車載機器への簡単な実装

ウィンボンドHQ シリアルNANDは、NORフラッシュと同様に車載機器への実装が容易であるのも特長です。出荷時から100回のP/Eサイクルまで、不良ブロックが無いことを保証します。つまり、コードストレージ・アプリケーションにおいて、SoCやマイクロ・コントローラに不良ブロック管理(Bad Block Management/BBM)を実装する必要がないのです。従来のシリアルNAND製品は通常BBMを必要とします。

また、パワーアップ時のページ0の自動ロード、オンチップECC、NORフラッシュ互換のリード・コマンド等の追加機能により、シリアルNANDから直接起動することも可能です。ウィンボンドのHQシリアルNANDフラッシュは、DRAMをサポートするSoCやマイクロ・コントローラでコードシャドウイング・アプリケーションとしての使用を意図しています。

さらに、256Mb(32MB)以下のシリアルNORフラッシュと512Mbまたは1GbのシリアルNANDフラッシュは、ピン配置とフットプリントが同じであるため、スムーズな移行が可能です。

 

コスト・メリット大でもパフォーマンスは低下せず

45nmノードを越えるNORフラッシュの微細化に対する障壁は、車載システム・メーカが新たなアプリケーション向けに、より大容量のコードストレージ用として高価なNORフラッシュを採用するとき、BOMコストが大幅に増えることを意味します。

ウィンボンドのHQシリアルNANDフラッシュは、安全性が重要視される車載システムで規定されている非常に高い信頼性と堅牢性の基準をクリアしつつ、512Mbや1Gb、2GbのシリアルNOR フラッシュの半分以下のビット単価という低コストで、十分なコードストレージ容量を提供します。

 

別表:引用文献

著:ウィンボンド・アメリカ/Anil Gupta(テクニカル・エグゼクティブ)

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