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超高速書き込みを実現したシリアルNANDフラッシュQspiNAND: 車載コードのOTAアップデートを可能にする新たな選択肢

自動車に搭載されるプロセッサーベースの電子制御ユニット(ECU)の数が増加していることは、よく知られています。自動車のシステムアーキテクトにとって重要なのは、自動車の新しいアプリケーションや開発中のアプリケーションのコードサイズも同時に増加していることです。これは、運転支援や自律運転機能の実装がプレミアムモデルに始まり、ミッドレンジから低価格車にまで急速に広がっていることが一因です。

衝突回避など先進運転支援システム(ADAS)の初期の機能は、一般的に256Mビット以下のコードで実装可能でした。現在開発中の新型車では、複数のセンサーを介して動作するレーダーやLiDARなどの測距・検知技術を利用し、より洗練された運転支援機能を搭載しています(図1参照)。高速道路のオートパイロットや車線維持支援など、これらの高度なセンサーシステムが対応するアプリケーションでは、コードサイズが急激に増大しています。例えば、現在開発中の車において、フロントカメラのECUは容量が1~2Gビットのコードを実行することになると予測されています。このため、自動車のシステムアーキテクトは、ECU内の不揮発性コードストレージの選択肢を再評価する必要があります。信頼性に優れ、データの整合性が高く、データ保持時間が長いため、従来はコードストレージとしてシリアルNORフラッシュが広く採用されてきましたが、最近はシリアルNANDフラッシュへの移行を検討するスケーリング論が、電子工学関連の出版物や技術会議でもよく取り上げられるようになってきました。

1: AudiA7モデル向け「パイロットドライブコンセプト」は、新しい車のデザインに搭載された複数のセンサーを示している。(画像提供:AUDI AG

 

NORフラッシュの構造ではダイ面積に占める1ビットあたりのメモリセル面積がNANDフラッシュより大きいです。メモリセル面積は、NORフラッシュで10F2、NANDフラッシュで4F2となっています。ダイ面積はコストと相関がありますが、完全に直線的な相関性ではありません。512Mビット未満の容量では、制御ロジック回路とインターフェース回路が占める面積の割合が比較的高いため、メモリセルのサイズは総コストへの影響が小さく、NORフラッシュが有利となります。しかし、512Mビット以上の容量では、メモリセルがダイ面積の大部分を占めるため、NORフラッシュよりもメモリセルのサイズが小さいNANDフラッシュが有利となります。

例えば、フロントカメラの1~2Gビットのようなサイズの大きいコードを保存する場合、シリアルNANDフラッシュは、同等のシリアルNORフラッシュの約半分のコストで済むため、検討する価値があります。しかし、多くのシステムアーキテクトの頭の中では、ソフトウェアのOTA(Over-the-Air)アップデートに対応する必要性が、シリアルNANDフラッシュの検討を行うにあたる決定要因になっているようです。これに関しては、最新のシリアルNANDフラッシュにおける優れた書き込みスループットが、シリアルNORフラッシュと比べて強力な利点をもたらします。

 

新たなセキュリティ上の脅威からの保護

OTA(Over-the-Air)アップデートは、次世代の自動車において、急速に必須機能になりつつあります。これには主に2つの理由があります。第一に、運転支援や自律運転機能の採用が増えていることで、自動車はこれまで以上に悪意のあるサイバー攻撃の標的になりやすくなったことです。自動車がソフトウェアによって操縦可能となっている場合、ソフトウェアがハッキングおよび改ざんされ、自律走行モードで危険な動作をするように指示されてしまう可能性があります。自動車内のハッキングされたファームウェアにセキュリティパッチを適用する最速の方法は、OTAアップデートです。

OTAアップデートを採用する2つ目の理由は、コストと利便性です。車が停車中にアップデートが自動配信され適用されるのであれば、所有者は車をサービスセンターに持ち込む手間が省け、アップデート適用のためにサービスセンターと契約する自動車メーカー側のコストも削減できます。また、OTAアップデートが自動車メーカーにとって基本的に無料であるなら、これまでよりもずっと頻繁にアップデートを配信することができ、自動車メーカーは車載ソフトウェア機能を継続的に更新してアップグレードすることで、製品の価値を高めることも可能です。

すでに車載市場における新モデルでは、OTAアップデートへの対応が本格化しています。2017年には、Boschの広報担当者が「数年後には、すべての新車で自動ソフトウェアアップデートが可能になるでしょう」と話していました。また、Continental社は、OTAアップデートのサポートに必要な技術を自社のECUに実装することを公言しています。

 

OTAアップデートのための重要なパラメータ:消去とプログラム速度

OTAアップデートが効果的に動作し、自動車のユーザーに受け入れられるためには、安全で高信頼性、かつ迅速であることが不可欠です。スピードは、ユーザーのためにも(車はアップデート中使用することができない)、そして運用上の有効性のためにも必要不可欠です。アップデートプロセスが短いほど、自動車メーカーのデータセンターへ無線接続するとき、切断による中断や無効化の確率が低くなります。

そして、ソフトウェアの高速アップデートにおいて、新しいシリアルNANDフラッシュは、最速のシリアルNORフラッシュよりも明らかに優位性があります。NANDフラッシュは、独自のアクセラレーション技術を適用しなくても構造上NORフラッシュより高速です。表1は、ウィンボンドの2GbのシリアルNORフラッシュW25H02JVと、2GbのシリアルNANDフラッシュW25N02JW(QspiNANDはウィンボンドのシリアルNANDフラッシュ製品のブランド名)のアップデート時間を比較した結果です。OTAアップデートの動作は2段階で実行されます。まず、古いコードがメモリから消去され、その後新しいコードが書き込まれます。シリアルNANDフラッシュの消去処理の速度は、シリアルNORフラッシュの約100倍です。ウィンボンドの高性能QspiNAND(Quad SPI NAND)のプログラム速度は、市場最速であるシリアルNORフラッシュの約5倍です。全体として、シリアルNANDフラッシュの書き込みスループットは、最速のシリアルNORフラッシュよりも10倍以上高速です。 これは、例えば2Gビットのソフトウェアスタックを書き込むとき、シリアルNANDフラッシュW25N02JWでは、所要時間がわずか35秒で済むことを意味しています。シリアルNORフラッシュW25H02JVに同じコードを格納するには、22分を要します。

1: シリアルNORQspiNANDの速度比較(出典:ウィンボンド)

 

ウィンボンドのQspiNANDは、実証済みかつ堅牢な自社の46nmシングルレベルセル(SLC)プロセスで製造され、シリアルNORフラッシュに匹敵するデータの整合性と耐久性を提供し、自動車の動作寿命全体にわたって安全性が不可欠である車載用アプリケーションにおいて、信頼できるパフォーマンスを実現します。

 

新たな問題:ブート速度

自動車メーカーはOTAアップデートの速度の点で、512Mビット以上の大容量コードに対して高い書き込みスループットを提供するシリアルNANDフラッシュを採用するようになっています。

しかし、コード量の増加は、書き込み速度だけではなく、ブート速度にも影響を与えます。フロントカメラなどのADASシステムでは、フラッシュメモリがコードシャドウイングモードとして使用されています。つまり、起動時にコードがフラッシュメモリからLPDDR4などのDRAMにダウンロードされます。このダウンロード時間は、総起動時間を決定付ける重要なパラメータです。車のドライバーは、スタートボタンを押してから数秒以内に車載システムの準備が整うことを期待しており、自動車メーカーは、このダウンロード時間を非常に重要視しています。

表1に示すように、ウィンボンドのQspiNANDは、標準的なシリアルNORフラッシュと同様のパフォーマンスを提供します。最大80Mバイト/秒の読み出しスループットでは、1Gビットのコードを1.5秒でダウンロードできます。これは車載においての許容範囲内です。しかし、2Gビットのコードでは、ダウンロード時間は3秒にまで上昇し、車両の総起動時間がより長くなります。ダウンロード時間を短縮したいと考える自動車メーカーもあるでしょう。その場合、最新のNANDフラッシュ技術が適しているかもしれません(図3参照)。ウィンボンドのOctalNANDフラッシュは、Octal NORフラッシュと比較してビットあたりのコスト優位性を提供し、また書き込みスループットにおいても優位性をもたらします。OctalNANDは、DRAMと類似したx8インターフェースの恩恵を受けて、最大240Mバイト/秒というより高い読み出しスループットを提供します。OctalNANDフラッシュを使用すると、2Gビットのコードをわずか1秒でダウンロードでき、どの自動車メーカーの起動時間仕様にも十分な速さで対応できます。

3: ウィンボンドのOctalNANDフラッシュは、最大240Mバイト/秒の読み出しスループットを提供し、車載アプリケーションで高速起動を実現する。(画像提供:ウィンボンド)

 

ウィンボンドのOctalNAND、 W35N-JWの8×6mm BGAパッケージは、シリアルNORフラッシュとフットプリント互換性があります。また、現在市販されているXccela™ FlashおよびOctal NOR Flash 製品と完全なピン互換性があります。

 

コスト、スピード、生産効率のメリット

512Mビット以上の車載用コード格納にQspiNANDを使用すると、同等のシリアルNORフラッシュと比較して約50%コストを削減できるので、これ自体で大きな利点といえます。さらに、自動車メーカーは現在、OTAアップデートの実装に不可欠である書き込み時間の劇的な短縮がQspiNANDやOctalNANDにより実現可能であることを認識し始めています。

QspiNANDの高速な書き込み時間は、ECUに大量のコードを書き込む際の工場での効率性とスループットを向上させるため、安全性を必要とする、またはミッションクリティカルなアプリケーション向けコード格納用に、シリアルNORフラッシュから置き換えるもう1つの利点となっています。

 

著者:Anil Gupta ウィンボンド・エレクトロニクス テクニカルエグゼクティブ 

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