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新たな診断データとオペレーションが自動車の機能安全規格要求に対応するためには、どのようにフラッシュメモリICを装備するべきか

NORフラッシュは、長年にわたり車載用途において使用されている信用された技術であり、今日、計器クラスタやインフォテインメント、テレマティクスシステムなど、さまざまな車載システムに使用されています(図1参照)。 これらのアプリケーションにおいて不揮発性メモリは、プログラムコードを保存し信頼性とExecute-in-Place (XiP/ホストプロセッサが外部DRAMを介さずフラッシュから直接コードを実行)を行うのに十分な読み出し速度を提供します。

NOR フラッシュは、現在利用可能な車で既に行われている、定速走行・車線維持など高速道路の準自動走行機能を装備しているADAS(Advanced Driver Assistance Systems)コンセプトの実装においても重要な役割を果たしています。 

また、自動運転技術の開発ペースは非常に速く、今後数年間で、より多くの車両が、フラッシュメモリを搭載したエレクトロニクスシステムによって制御されることになると予測されます。

ADASでは計器クラスタやその他あらゆる場所と同様に、フラッシュメモリは安全性が重要なシステムコンポーネントです。 このようなシステムにおいて不具合が生じると、車両が危険にさらされたり、または制御不能になる可能性があります。 システム異常のリスクを管理及び最小化するために自動車業界はISO26262機能安全規格を実行しています。同規格の主な項目は以下の通りです。

予測可能な動作障害が発生した際、安全に存続し、復旧するための安定した手段をシステムに要求する。


図1:2014年Audi TTのバーチャル計器クラスタ。 NORフラッシュは、起動時に必要なクラスタ情報を素早くに表示する目的で広く使用されています。 (画像著作権:Robert Basic under Creative Commons license

したがって、自動車システムOEMは、前世代のデバイスよりも優れたシステムレベルで機能安全設計要件に対応できる新しいタイプのフラッシュICを要求し始めています。 この記事では、既存NORフラッシュICの動作モードについて説明し、ISO26262規格に準拠するためのシステム設計者の取り組みを完全にサポートするための、新しい車載向けシリアルフラッシュ製品が提供する機能について説明します。

これらの動作安全機能には、シリアルNORフラッシュメモリ(ブートコードストレージ用の組み込みシステムで最も頻繁に使用されているフラッシュメモリタイプ)とシングルレベルセル(SLC)NANDフラッシュの両方に用いられています。実際、シリアルNANDは、多数のプログラム/消去サイクルを必要とせず、XiP実装不要なアプリケーションにおいて、NORフラッシュの有効な代替品としてコードストレージ用に使用されます。WinbondのSLC NAND技術は高品質を証明された46nmプロセスで製造されており、機能安全アプリケーション向けには新しい微細プロセスで製造されるシリアルNAND製品より適しています。また、55-65nmのNORフラッシュと同等のデータリテンション期間を提供します。

シリアルNANDの利点は、低コストな点です。NANDフラッシュのビットセルはNORフラッシュの4分の1の大きさです。ウィンボンドのシリアルNANDはECC(Error Correcting Code)エンジンを搭載し、ページやブロックの境界線をまたぐ読み出しでの高速連続/順次読み出し機能に対応しており、車載機能安全アプリケーション設計者の間ではNORフラッシュと並んで積極的に検討されつつあります。

診断データの公開表示

NORフラッシュメモリ技術は非常に信頼性が高く、動作寿命の予測が可能なデバイスです。市場で既にその品質が証明されており、なおかつ車載OEMがこの技術を好む理由は、今日、何百万台もの車両での使用実績に基づいています。ISO26262規格は、全部で4つの 'ASIL'グレード(Automotive Safety Integrity Level)で信頼性とその他のパラメータを指定しています。ステアリングやブレーキなどの最も安全が重視されるシステム向けにはASIL-Dの一番厳しいグレードで、全システムレベルにおける最大故障率が10 FIT(Failure In Time - 10億デバイス×時間あたりの故障率の測定値)に設定されています (図2参照)。NORフラッシュICなど個々のコンポーネントレベルでは、10FITをはるかに下回る最大故障率でなければなりません。


図2:単一不良および潜在不良の最小検出率、およびISO 26262規格で規定されている最大不良率

自動車メーカーはISO26262に基づき、NORフラッシュICに起こりうるいかなる不具合の可能性を特定する必要があります。そして、2017年5月の記述時点ではNORフラッシュICメモリは“ブラックボックス”として車載OEMに供給されています。ユーザーは、従来品のデータの整合性やリテンションを維持する機能にアクセス出来ません。この閉鎖的な操作は、ホストシステムが構成部品の不具合、または不具合発生の可能性を示す異常動作を監視し、適切な機能を維持するためにある機能安全の原則と矛盾します。

つまり、ISO26262準拠のシステムで使用するNORフラッシュICは、ホストコントローラへの診断データを提供可能にし、データが示す不具合のリスクが高まるのに応じてホストがICの動作を変更できる手段を提供しなければなりません。

NORフラッシュICの主な2つの機能は、以下データを提供します。

ECCデータが機能安全動作をサポートする仕組み

従来のNORフラッシュICは、ECCエンジンがバックグラウンドで動作し、ホストコントローラに警告することなくマルチバイト単位でのビットエラーを修正します。 

しかし実際には、ECCデータを使用することにより様々な方法で機能安全性遵守が可能になります。 ECCエンジンは、1-ビットエラーを修正し(メインデータビットとパリティビット間の不一致が1―ビットのみの場合)、 2-ビットエラーを検出することが出来ます(修正は不可)。

ホストコントローラにステータスレジスタを用意することで、NORフラッシュデバイスは最新の読み出し動作の結果が下記3項目の中の1つであるかどうかを提示します。

この、「事後」情報は長期的なデータ整合性を維持するのに役立ちます。しかし、ISO26262では不具合発生と同時にそれを検知し、直ちに対策を取る必要があります。ウィンボンドの新しい車載向けNORフラッシュICは、専用のエラーピンを介してリアルタイムにエラー情報を提供します。このピンは修正不可能データの正確な位置を特定するためにアサートされる事もあります。ユーザーオプションとして、1-ビットエラー修正後、または修正不可能な2-ビットエラーの検出を選択しエラーピンに提示させることも可能です。

ホストはその後、ステータスレジスタやエラーピン、もしくはその両方から得た情報を用いてエラーレジスタを構築し、効果的にNORフラッシュアレイのマップを作成、ビットエラーの位置を記録します。続いて、基準値を設定します。特定ブロックなど一箇所で発生するエラーの数が基準値を超えた場合、その場所は使用されなくなります。メモリセルの特定ブロックで修正された1-ビットエラーが繰り返し発生すると、ブロックが弱くなり、早期故障の危険性があるため、これは賢明な予防措置と言えます。

潜在的な不具合を特定するための手段

ここまでは、ISO26262が定める各ASILグレードの最小検出率のための、単一不具合処理方法について述べられてきました。しかしこの規格では、自動車システムに「潜在的欠陥」を検出することも求められています。潜在的欠陥とは、機能的な安全要件には違反していないが、二次的不具合に関連した際に違反する可能性のある不具合のことです。

NORフラッシュICには、このような潜在的欠陥の可能性があります。ECCエンジンの誤動作がその例です。 通常の動作では、NORフラッシュテクノロジーは非常に信頼性が高く、エラー修正はほぼ不要です。ECCエンジンの不具合により正常ビットが誤修正されない限り、この不具合に気づきません。しかし、ECCエンジン不良(潜在的欠陥)によりシングル不良ビットが修正されないと、2つの不具合が重なり機能安全性に危険が及びます。

潜在的なECCエンジン不良を検出するため、ウィンボンドの車載用NORフラッシュは特殊なユーザーモードとECCエンコーダーリードコマンドを搭載しています。これにより、ユーザーはメインデータパターンをメモリに与え、生成されたパリティデータをECCエンジンから読み戻すことが可能です。パリティデータが不正確な場合、エラーの警告が出ます。

同様に、ユーザーモードはECCでコード動作を確認するためにも使用する事が可能です。ユーザーがメインデータおよびパリティデータをECCエンジンにロードし、特別なECCデコーダリードコマンドでメインデータを読み戻すことが出来るからです。また、メインデータおよびパリティデータに1-ビットおよび2-ビットエラーを導入し、ECCエンジンが1-ビットエラー修正または2-ビットエラー検出を適切に実行するかどうかをチェックすることもできます。このECCエンジンチェックはシステムの電源を入れるたびに実行すべきという点が、ウィンボンドの推奨しているポイントです。

生産部品における新しい機能安全性能

ウィンボンドはADAS製品やその他車載システムメーカーのニーズに応え、前述の動作安全機能を車載NORフラッシュ新製品に搭載しています。 最大80MB/秒のデータ転送速度を特長とするQuad 3Vファミリは、256Mbの容量にてサンプル提供可能です。2017年下半期には、512Mb製品(256Mb x 2枚のスタックダイ)が提供可能になる予定です。さらにウィンボンドは2018年に、512Mbのモノリシックダイ、そして、2枚の512Mb品からなる1Gb製品をリリース予定です。

300MB/秒以上のデータ転送速度を特徴とするWinbondのオクタル1.8Vファミリは、256Mb以上の容量で提供され、2018年下半期にサンプル開始が予定されています。その後、その他の容量が続く予定です。

ウィンボンドは、機能安全性能を備えたシリアルNAND製品も提供しています。512Mb、1Gb及び2Gb(1Gb x 2 枚のスタックダイ)の容量にてサンプル提供可能です。

1GbのW25N01GVを含むウィンボンドのシリアルNAND製品は、読み出しデータがECCなしで正常か、ありで正常か、または修正不可能なのかどうかの情報をステータスレジスタに送ることで、機能安全性能をサポートします。シリアルNANDのページサイズは2KBで、1ビットエンベデッドECCはセクタレベル(512バイト)で提供されます。つまり、2KBのページで最大4ビットの修正が可能です。また、ウィンボンドのシリアルNANDは追加のユーザーコマンドで不良ページの位置を読み出す機能もご提供します。


図3: ウィンボンドのシリアルNANDが潜在的に弱いセルやブロックを特定する際のエラーログ

 

ウィンボンドの機能安全アプリケーション向けSPI NORやシリアルNANDソリューションは、設計要件に応じた適切なフラッシュメモリの選択肢をご提供いたします。

著:ウィンボンド アメリカ/ Anil Gupta(テクニカルエグゼクティブ)

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