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新世代のウェアラブル医療機器に要求されるセキュリティと高容量の不揮発性メモリ

世界が新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の危機から脱したとしても、患者や医療現場に長期的な影響が残るでしょう。

ウィンボンド・エレクトロニクスはスペシャリティメモリのリーディングサプライヤーとして、常に医療機器市場などにおけるトレンドを幅広く把握するよう取り組んでいます。アフターコロナでは、患者の健康状態をモニタリングすることが増え、対面医療の方法も変わることが予想され、個人用およびウェアラブル医療機器の需要が高まることは明らかです。この需要パターンの変化は、メモリ製品のユーザーにとって重要な意味を持ちます。

この記事では、医療用電子機器市場の新たな状況によって、セキュアなメモリデバイスの導入や、低ビット単価で大量のユーザーデータを格納きる不揮発性メモリチップが必要となる理由を説明します。

 

侵入や攻撃のリスクがある個人用医療機器

人々は今回のパンデミックにより、三密状態が感染被害のリスクを高まるということを認識するようになりました。

当面は、世界中で屋内のソーシャルディスタンス確保が義務付けられるでしょう。学校や工場と同様、病院もまたソーシャルディスタンスを維持するために、一度に来院する患者数を減らす方法を模索しています。

そのため医療システムは、経過観察のための入院を減らすため、病院外でのモニタリングや診断を可能にするテクノロジーを積極的に採用することが見込まれます。

心拍数などの生理的徴候をモニターするアクティビティ・トラッカーなどのウェアラブル機器はすでにコンシューマ市場に出回っていますが、今後は多くの医療現場においてさまざまな治療にこのウェアラブル機器が使用されると、ウィンボンドは予測しています。感染症は新型コロナウイルスだけではありません。過去にも、HIV、MERS、SARSなどがありました。また、世界の人口増加に伴い、野生動物から新たな感染症が発生すことも考えられます。今回のパンデミックにより、感染時に健康であれば重症化する可能性が低いということが分かりました。アクティビティ・トラッカーやヘルス・トラッカーは、人々がより健康的なライフスタイルを維持し、未知の病気に対する抵抗力を高めるのに役立ちます。

つまり、アフターコロナにおいて、専門的ウェアラブル医療機器と個人用ウェアラブル機器の両方が幅広く使用されるようになると思われます。

ウェアラブル医療技術が一般的に普及することは、以下2つの理由から、セキュリティに大きな影響を与えます。

 

ウェアラブル機器のリスクは現実のものです。米国食品医薬品局(FDA)などの公的機関は、Bluetooth Low Energy無線チップセットに影響を与えるサイバーセキュリティの脆弱性、SweynToothファミリなど既知のリスクについて、ユーザーやメーカーに警告し続けています。SweynToothに関するFDAの2020年3月の発表では、「特定の状況でこれらの脆弱性を悪用するソフトウェアがすでに公開されている」と言及されています。

ウィンボンド・エレクトロニクスは、コードおよびデータ格納用にセキュアなメモリを提供することで、ウェアラブル機器をSweynToothなどの脅威から守ります。医療機器では、データやコードの転送時に脅威にさらされることが多いです。例えば、ウェアラブル心臓モニターからユーザーのスマートフォンに記録された心拍測定値がBluetooth Low Energy接続を介してアップロードされる時や、更新されたファームウェアがクラウドからウェアラブルデバイスに無線配信される時などです。

シンプルなウェアラブル機器おいて、セキュリティ対策はマイクロコントローラーやSoCにて行われます。セキュアなコードストレージ用の低容量オンチップフラッシュメモリなどもそのひとつです。ただし、高度なデバイスはコードサイズが大きく、エンベデッドメモリに入りきらないため、コードストレージ用に外付けフラッシュメモリを使用する必要があります。しかし、この外付けメモリが暗号化エンジンやRoot-of-Trustなどのセキュリティ機能を提供していない場合、脆弱性が生じます。そして、外付けメモリが危険にさらされると、ホストのMCUやSoCがどんなにセキュアであっても、デバイス全体とそのデータが危険にさらされることになります。

この問題を解決するのが、ウィンボンド・エレクトロニクスのセキュアフラッシュメモリ、TrustME®ファミリです。最新のTrustME®製品であるW77Qシリーズは、接続されたデバイスをリモートソフトウェア攻撃から保護します。医療機器内に堅牢で”End-to-End”のセキュリティを確保することにより、以下のことが可能になります。

 

大量の個人データを低コストで保存する方法

ウェアラブル機器や在宅患者モニタリング機器を使用することで、医療機関の負担は緩和されます。しかし、この個人用機器は、大量の個人データを生成します。心拍数や心拍変動、血中酸素濃度、体温など、さまざまなバイタルサインを同時に監視するマルチセンサーモニタリング機器がすでに市場に出ています。

ウェアラブル機器はインターネットへ常時接続することができないため、ユーザーデータをローカルストレージに保存しなければなりません。つまり、医療用ウェアラブル機器には高容量のフラッシュメモリが必要です。また、データに基づいて患者の診断や治療について行われることがあるため、データの完全性は必要不可欠な要件となります。

従来、データストレージ用の高信頼性フラッシュメモリとしてNORフラッシュが選ばれていました。NORフラッシュは512Mビットより小さい容量帯においては費用対効果の高い選択肢です。しかし、512Mビット以上の容量が必要な場合、NANDフラッシュの利点が活かされます。

ウィンボンドは、医療機器のユーザーデータ格納用に、NORフラッシュメモリに代わる高信頼性かつ高速の代替品が普及すると予測しており、高信頼性のSLC(シングル・レベル・セル)NANDフラッシュ製品のリード/ライト機能を向上させる新しいテクノロジーを開発しました。

例えば、QspiNANDファミリW25Nシリーズは、512Mビット、1Gビット、2Gビット、4Gビットの容量で提供されています。従来のSPI NORフラッシュと同じインターフェイスを有し、既存設計のまま簡単に置き換えることが可能です。512Mビット以上の容量帯においてNORフラッシュよりビット単価が低く、ボードのフットプリントも削減できます。また、高速プログラム/消去および高信頼性を特徴としており、エンデュランスは10万回以上、データ・リテンションは10年以上となっております。さらにオンチップECC(Error Correction Code)により、ビットエラーをなくします。

また、ウィンボンドはより多くのセンサーを統合し、より高いサンプリング速度で動作する医療機器向けに、高速なデータ転送機能も提供しています。高性能のQspiNANDフラッシュおよびOctalNANDフラッシュ製品は、信頼性に優れたSLC NANDフラッシュと同等の品質を提供しつつ、さらに高データ帯域幅を備えています。

 

新世代の個人用医療機器

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)パンデミックの影響はまだ続いていますが、医療業界において、より多くの個人用ウェアラブルテクノロジーの採用が必要となるのは明らかです。これらの個人用医療機器はデータが重要な鍵となり、セキュリティおよびストレージシステムの設計に大きな影響を与えます。

ウィンボンド・エレクトロニクスは未来を見据えてメモリテクノロジーにアプローチし、セキュアなNORフラッシュ製品と、高信頼性・高容量のQspiNANDフラッシュの開発を行いました。ウェアラブル医療技術が進化する中、セキュアで低コストなコードおよびデータストレージを提供するために、これからも新製品や新技術の開発に努めてまいります。

 

【著者】

Hung-Wei Chen(ウィンボンド・エレクトロニクス、セキュリティソリューションマーケティングディレクター)

Wilson Huang(ウィンボンド・エレクトロニクス、フラッシュメモリ製品マーケティングマネージャー)

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